Q. 法人の所得に課される税金の計算方法について教えて欲しい。
A. 会社規模、所得、進出する地域で異なります。静岡県に拠点を置く場合、以下の「事例」のケースでは、目安として、表のとおりの税率・額となります。より細かい条件、事例以外のケースについては、国税庁、地方自治体等のウェブサイトで確認してください。
また、適法かつ節約した税金納付には、専門的な知識が不可欠であり、実際の事業活動にあたっては、税理士等の専門家への相談を行うことをお勧めします。静岡県外資系企業ワンストップ・センターでは、外資系企業に関わる経験豊富な専門家の紹介等の支援を行っています。
基本的な制度・計算方法
(1)事例
- 静岡県静岡市に、従業員数40人の子会社(日本法人)を設立。他の市町村に事務所無し
- 資本金1,000万円超1億円以下(資本金5億円以上の大法人の100%子会社ではない(*1))
- 前年度の所得額は2,500万円以下(*2)
(*1) 100%子会社に該当する場合は、所得税の基本となる「所得金額」から控除できる損金の取扱に制約が出るほか、低額部分の法人税率が変更となる
(*2) 「所得金額」は、概ね「益金-損金=純利益(税引き後利益)」にあたるが、損金の取扱(欠損の繰越処理)等が異なることから、企業会計上の利益とは異なる
(2)税率等 (2020年4月1日以降に開始する事業年度に適用)
種 類 | 概 要 | 400万円以下の部分 | 400万円超800万円以下の部分 | 800万円超の部分 | |
---|---|---|---|---|---|
法人税 | 前年度の所得金額×税率 | 15.00% | 15.00% | 23.20% | |
法 人 住民税 |
県民税 | 資本金の額に応じた均等割 | 52,500円 | ||
法人税額×税率 | 1.0% | ||||
市民税 | 資本金の額に応じた均等割 | 130,000円 | |||
法人税額に応じた割合 | 6.00% | ||||
事業税 | 前年度の所得額×税率 | 3.50% | 5.30% | 7.00% | |
地方法人特別税 | 前年度の所得金額×法人事業税率×税率 | 37.00% | |||
総合税率+均等割 | 前年度の所得金額×税率 | 20.85% | 23.31 | 25.64% | |
均等割額 | 182,500円 | ||||
実効税率+均等割(*3) | 前年度の所得金額×税率 | 19.89% | 21.73% | 23.40% | |
均等割額 | 182,500円 |
(*3) 前年度に支払った事業税及び地方法人特別税は、損金への算入が可能であり、各税率の単純な合算である「総合税率」よりも、これを反映した「実効税率」が実際の負担となる。また、均等割部分は、原則として前年度所得がマイナスでも支払う必要がある
(3)計算例
前年度の課税所得金額が、2,500万円の場合 ⇒ 合計 約670万円の負担
種 類 | 税率による部分 | 均等割部分 | 合 計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
~400万円 | 400~800万円 | 800万円~ | ||||
法人税 | 600千円 | 600千円 | 2,550千円 | - | 3,750千円 | |
法人 住民税 |
県民税 | 6千円 | 6千円 | 26千円 | 52.5千円 | 90.5千円 |
市民税 | 36千円 | 36千円 | 153千円 | 130千円 | 355千円 | |
事業税 | 140千円 | 212千円 | 1,190千円 | - | 1,542千円 | |
地方法人特別税 | 52千円 | 78千円 | 440千円 | - | 570千円 | |
総合税率+均等割 | 834千円 | 932千円 | 4,359千円 | 182.5千円 | 6,308千円 | |
実効税率+均等割 | 796千円 | 869千円 | 3,977千円 | 182.5千円 | 5,825千円 |
その他の主なルール
(1)外形標準課税
日本への進出形態を問わず、資本金1億円超の法人には、所得割の他に付加価値割と資本割が加わる「外形標準課税」制度が適用されます。
資本金1億円超の法人には、このほか、法人税の800万円以下部分の軽減措置がないこと(一律23.9%)や、住民税の均等割額の増額などの負担が求められます。
種類 | 概要・区分 | 400万円以下の部分 | 400万円超800万円以下の部分 | 800万円超の部分 |
---|---|---|---|---|
事業税 | 付加価値割(付加価値額 *1×税率) | 1.20% | ||
資本割(資本金等の割合×税率) | 0.50% | |||
所得割(前年度の所得額×税率) | 0.40% | 0.70% | 1.00% | |
地方法人特別税 | 前年度所得金額×法人事業税率×税率(*2) | 260.0% |
(*1) 報酬給与額+純支払利子額+純支払賃借料+単年度損益
(*2) 2016年4月1日以降に開始する事業年度
(2)法人事業税の超過課税
- 日本の複数の自治体では、特定の施策の財源として、条例制定による超過課税を行っています。静岡県では、想定される南海トラフ巨大地震に備えた対策実施のために、一定の条件で、法人事業税の上乗せ措置を実施しています。
- 対象となるのは「資本金1億円超」「資本金1億円以下で所得金額3,000万円超」などの法人で、2024年3月31日までに終了する事業についてです。
- 超過課税により上乗せされる税率は、所得割の場合、外形標準課税対象法人は0.95~0.18%、その他の法人は0.25~0.48%です。
(3)欠損金の取扱
- 各事業年度の所得の計算上生じた欠損金は、一定の手続を行うことで、その後10年間繰り越しが可能です。
- ただし、「資本金が1億円を超える法人」「資本金が5億円以上の大法人の100%子会社」は、控除できる額に制限があります。