Q. 日本への進出形態を検討するポイントについて教えて欲しい。
A. 対日投資は、大きく分けると「自社での進出・拠点設置」「他社との協業・資本参加」があります。自社での拠点設置の場合、その形態は「駐在員事務所」「支店」「子会社(日本法人)」の3種類が考えられ、自社の目的や進出規模に合わせた検討が必要です。
拠点形態の比較
項 目 | 駐在員事務所 | 支店 | 子会社 | |
株式会社 | 合同会社 | |||
営業活動 | できない | できる | ||
意思決定 | 本国 | 日本 | ||
登記手続 | 不要 | 必要 | ||
設立費用
(目安) |
不要 | 登記実費:100千円
印鑑作成: 50千円 代行業者:440千円 |
登記実費:250千円
印鑑作成: 50千円 代行業者:490千円 |
登記実費:100千円
印鑑作成: 50千円 代行業者:440千円 |
資本金 | 不要 | 1円以上 | ||
出資者数 | - | 1名以上 | ||
株式公開 | - | 可 | 不可 | |
利益への課税 | - | 原則として、日本で発生した所得だけに課税 | 発生場所を問わない会社の利益全体及び株主への利益配当に対し課税 | 発生場所を問わない会社の利益全体及び社員への利益配当に対し課税 |
主なメリット | 登記手続が不要 | 設立手続が簡便かつ低コスト | 他と比較して、信用度が高い | 株式会社よりも、経営の自由度が高い |
主なデメリット | 活動内容に制約 | 独立した法人より信用度が低いと見なされる(融資等) | 他と比較して、設立手続が最も複雑かつコストが高い | 株式会社よりも知名度が低くなりがち、上場できない |
*ジェトロ対日投資ガイド等から、静岡県作成
形態ごとの特徴
(1)駐在員事務所
- 外国法人が、宣伝活動など本国会社の事業遂行のための補助的活動や、本格的な営業活動を行うための準備を行うための事務所です。
- 市場調査、情報収集、物品の購入、広告宣伝などの活動を行うことができますが、直接的な営業活動、販売活動はできません。
- 所轄官庁への事業の届出は不要で、日本に恒久的施設を有しない場合は法人税の課税対象になりません(ただし、銀行、保険会社等の金融機関は、金融庁への届け出が必要)。
- 法人登記ができないため、法人口座の取得や、法人として契約の主体になるような活動はできません。
(2)支店
- 外国企業が、日本で営業活動、継続的な取引を行うためには、支店または子会社(日本法人)の設立が必要となります。この内、支店設置の方が、比較的簡便な方法です。
- 支店としての活動拠点を確保し、支店の代表者を定めた上で必要事項を登記すれば、営業活動を開始することができます。駐在員事務所とは異なり、法人税の課税対象になりますが、支店の名義で銀行口座を開設することができます。
- あくまで外国法人の一部であるため、営業年度などは本社と同じにする必要があります。また、外国の本店等によって決定された業務を日本において行う拠点であり、通常は単独で意思決定を行うことは予定されておらず、支店の活動から発生する債権債務の責任は、最終的には外国企業に直接帰属することになります。
(3)子会社(日本法人)
- 日本国内で独立した法人格を持ち、開設に際して法定の役員(機関)を設置する必要があります。
- 外国企業や投資家が有限責任として利用できる会社形態には、株式会社と合同会社の2種類あります(会社法では、小規模な会社を想定した合名会社、合資会社が定められていますが、無限責任社員が必要となるので、この形態で対日投資を行うケースは少ないようです)。
- 株式会社と合同会社は、出資者が出資した財産の限度で責任を負うことに変わりはありませんが、合同会社は株式会社に比べて「設立コストが安価」「経営の自由度が高い」等のメリットがあります。この一方、「知名度が低くなりがち」「上場出来ないため大規模な出資を募りにくい」等のデメリットがあります。